当時の外交官たちに日本の学問である和学を奨励したり、他の国の言葉を翻訳する部署である司訳院の管理は司訳院の中では該当する外国語だけ用いさせたりなど、当時の観点からみると、革新的であるだけでなく、今日と比べてみても全然劣らない方法は世宗の実利的なスタイルをよく表しています。同じ理由で、世宗は自主国として朝鮮の権益を確保するために多くのことをしました。李従茂により対馬を征伐させ、倭寇を追い出し拉致された朝鮮人と明の人々を救った後、対馬が確かに慶尚道の観察使の管轄であることを文書として対馬主に知らせたこと、崔潤德と金宗瑞により鴨緑江と豆満江の流域一帯の女真族を追い出させ、四軍と六鎭を開拓し、三国時代以降急激に縮小した国土を拡張したことなどは、朝鮮の歴史を見事に装飾する誇らしい歴史です。天才発明家として有名な蔣英實の登用も身分に縛られず優れた人材を登用しようとした世宗の合理的かつ実用的な思考の延長線上で考えることができます。世宗時代には渾天儀、水時計、日時計、測雨器、簡儀臺、甲寅字など、膨大な数の発明品が溢れでました。これは、かなり多くの部分が官妓の息子である蔣英實を登用した彼の革新的な人材政策から始まったものでした。

世宗は人を大事にした君主でした。世宗は政治をするにおいても自分が持っている権威の独断を遠ざけ、朝廷の大臣達との対話と協調を通じて問題を解決していった人物です。世宗時代に士大夫のうち、刑罰で死んだ人がいなかったのは彼の愛民と包容の精神を最もよく表しています。元金を超えた利息を受け取ることを禁止したり、出産した官婢にまで100日間の出産休暇を与えたりなどの政策は国民の福祉に力を尽くす、今日も感服するほどの人間本位なものでした。

彼の学問的な才能と実利に明るい意識、民を愛する心を何よりもよく表したのはまさにハングルの創製であるといえます。世宗14年11月7日の政事をみると、「たとえ道理を知る人でも法律を知らなければ罪の軽重を知らないもので、まして愚かな民がどうやって罪の軽重を知り、自ら直していくでしょうか。たとえ百姓たちにすべての法律を覚えさせることはできないにしても、大きな罪の條項だけでも別に抜き出して吏読に翻訳させ、民間に頒布し彼らにより罪を避けさせることが道理ではないないでしょうか？」と述べたところから、言葉と文字が違って不便さと悔しい思いをする民のために対策を用意しようとした彼の意図を知ることができます。これで推測してみると、彼のハングル創製の目的を知ることができます。それだけではなく、ハングルは世宗の卓越した学問的素養を通じて作られたものであり、ハングルの頒布はこれに反対する朝廷の大臣らの意見を対話と妥協を通じて成し遂げた重大な事業でした。これは世宗の優れた能力と優しい品性を含意する象徴と同じようなものであるといえます。

天才性だけで注目を浴びるには、朝鮮王朝には立派な王様が他にも大勢います。しかし、世宗が今日まで相変わらず崇め続けられる理由は彼の天才性の源泉が民を思う愛民精神に起因したもので、理想だけに止まりやすいこの精神を絶えず実践していったということが原因であるでしょう。変えればいいのだが、すでに自分に慣れてしまってその必要性を忘れること、変えなければならないが、惰性に塗れて自分の安楽のためにただ我慢すること、世宗はそれを革新し、朝鮮のルネサンスを起こしましたが、これは民衆を愛したからでこそ可能なことでした。

600年が経った今日までも世宗のこのような優しい心は韓国人の胸に温かい感動を与えています。彼の名前に因んだ世宗科学基地は南極のキングジョージ島にある科学基地です。また、世宗王識字賞はユネスコが制定した文解率の増進のために努力した人や団体に与えられる賞で、世宗ソロイスツはジュリアード音大に在職している姜孝(ガンヒョ)教授の責任の下で運営されているアンサンブル団体です。世宗大王艦は韓国海軍のイージス構築艦KDX-3の1番艦であり、世宗市は2015年までに政府の省庁が移住する予定の行政中心複合都市の名前です。世宗科学高等学校は大韓民国の科学高等学校で、世宗大学は4年制の総合大学です。大統領官邸本館の手前左の建物の名前は世宗館です。大韓民国の記念日の一つである＇師匠の日＇は世宗の誕生を新暦に換算した日である5月15日にしました。私達が1万ウォン札で毎日のように会える世宗大王は彼の卓越した発明品であるハングルと共に今も私達の生活のあちこちに残り、深い影響を及ぼしています。